リネージュ2
RMT勝者が決まると、人の塊は風浪のように激しく揺れ動いた。紙切れに化してしまったレース券をばら撒いて踏みにじったり、歓喜の
雄たけびを上げながら抱き合う者もいた。もしくは人目を忍んでほくそ笑みながらレース券に記録された番号を確認する者も見受け
られた。『南海商会』の社長マルティエンの場合、声を殺して笑っていたかと思うと横の人に抱きついてピョンピョン飛び跳ねたり、
遂にはその相手を殴り倒しては券をアデナに換えるため人混みを乱暴に掻き分けていくようなタイプだった。レース管理人はにっこ
りと笑って、形式的にレース券を確認した。レース場の運営側としては相当の金額を持っていかれることになるので地団駄でも踏み
たい気分だろうが、レース管理人の顔からはそんな色は微塵も感じ取られない。単に雇われている身としてレース場の損益なんか関
係ない、自分の給料さえもらえればいいや、と思っているのではなく、マルティエンに渡すアデナなど色あせて見えるほど、このレ
ース場の収益は莫大なものなのだ。しかしマルティエンは袋を受け取ろうとしなかった。彼は2-3歩離れたところで目を見開いて夢見
るような表情で残りのレースのスケジュールを見上げていた。そしてしばらくしてから、期待に満ちた口調でレース管理人に話しかけ
た。