ても、オーレンの領主だってただの領主にすぎない。いくら住民たちが親切で情け深い領主だと言って
も、実際は偽善心と虚栄心に満ちた者であろう。オフィリアは彼の意見に反発した。偽善心と虚栄心を
持たない者などいない。だとしたら、その偽善と欲望を、私腹を肥やすためだけでなく、他人のために
使う方がマシではないかと。カインはきっぱりと答えた。自分自身の欲望に素直になる方がマシだと。
他人のため、自分の名誉のために、我が娘を会ったこともない男に嫁がせる奴よりも、むしろ自分と自
分自身の家族の安全だけを守り抜く、利己的な者の方が100倍マシだと。スーザンが不安そうな面持ちで
カインを呼んだ。いつのまにかカインの顔からいつもの笑顔が消えていた。笑っていない時のカインの
顔は冷酷に見えた。カインはやっと回想から目が覚めて、いつものへらへら笑いを始めた。またそんな
耳障りなことを彼女に言った日には、ただでは済まされないだろう。オークが両手を握り締めたまま、
ドスン、ドスンと後を追った。肉厚の体格のせいで、まるいで歩いているようにも見えたが、簡単に2人
に追いついてしまった。テントを張っていた場所はきれいに整理されて、20名を超える血盟員たちが荷
物を背負って待っていた。まるでウサギ狩りでもするかのように、カインとオフィリアの後を追いかけ
るアグムンを見ながら、血盟員たちは何が起こっているのかすぐに察して、クスクスと笑った。