カインツは純真無垢な顔で彼を見つめた。 リネージュ2
RMTステファンは貴族の息子だった。 彼はカインツがわざ と無邪気に振舞っていることなどはなから見抜いていた。 やさしい振り、何も知らない振りをしながら、必死に愛を、そして称賛を求めているということも。それを知りながらカインツの側を離れなかったのは、少しでも彼の才能を盗みたかったからだ。 出来ることなら、殺してでも奪い取りたかった。授業が始まった初日から自分には才能がないということを思い知らされた。 彼は三人息子の末っ子だった。 二番目の兄は長男にもしものことがあった時に備え、後継者の教育を受けた。 彼にはそんな機会すら回ってこなかった。 聖職者になりたいと言うと、父は快く承諾して、できる限り彼を後押しすると約束した。人より劣ってなければ良かった。 父は自分が望む仕事に就けるよう援助してくれると言ったし、彼もそれ以上多くを望まなかった。 カインツが、カインツさえいなかったら、それで満足していただろう。 大成功とは言わずとも、望みの役職を手に入れられたのだ。彼もカインツの噂を耳にしていた。 でなければ、彼だと気付かなかっただろう。 幼い時のカインツはとても愛らしい子供だった。 ぽっちゃりとした頬は、いつでも愛らしく赤く染まっていたし、グランドマジスター フィリップはいつもカインツのやわらかい栗毛を撫でていた。あれは本当にカインツだったのだろうか? 酒と世の荒波にもまれてしわくしゃになった顔、それに顔中シミだらけだったじゃないか? あの年でもう?30年前、まだ幼い頃はカインツがうらやましくて、何度もくやし涙をながした。 その時だけは彼の才能と交換できるなら、自分の命を差し出しても惜しくはないと思った。