戦いだった。グレシアを統一したパリスは、トラヴィスの死後のアデン国王がまだ16歳の少年
だと聞いて意気揚々と兵を起こした。幼い王アマデオは、少し前にアデンを侵攻したエルモア
と手を組み、パリスの攻撃から国を守ることに成功した。パリスはこの事で憤死したのだが、
グレシアを統一するまで不敗の伝説を残した王にしては虚しすぎる死だった。アマデオは統一
王ラウルを彷彿させる外交的手腕を発揮し、分裂しているグレシアとアデン、エルモアの間に
不可侵条約を成立させた。その後諸国は長い戦争で疲弊した国力を回復させるのに力の限りを
尽くした。
長く惨酷だった戦争が古い伝説のように色褪せた記憶になる頃、アデンの「預言の証人」ビシ
ョップ フランツが国境を越えることに成功した。国境守備隊がフランツの正体を知りつつも
目をつぶる最中、書信が何度か国境を往来し、その後には豪華絢爛なインナドリルの物資が音
もなく続いた。
徐々に力を蓄えている新たな敵に対抗するために、黎明の君主たちが見えないところで相手の
君主を探索している間、黄昏の革命家たちもまた、さほど強いつながりを持たないままで自ら
の力を育てようとしていた。いくつかの黄昏の革命家に属する血盟が、嵐が吹き荒れる夜に秘
密裏にエルモアの地に足を踏み入れた。
まるで予告されていたことかのように、アデンとエルモアの間に立ちはだかっていた壁が崩れ
去った。この世は再度変革の時を迎えている。
数回の戦争を経て、長期にわたって断絶していた二つの国家が門戸を開くことになったのが、
黎明の君主と黄昏の革命家という対立する勢力によって成し遂げられたという事実は、歴史の
アイロニーと言うしか他ない。
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