ても、征服したことに変りはない。たとえ一人しか生きて戻ってこれなかったとしても十分だったのか
もしれない。狭くはジグハルトが『黎明の君主たち』に入るためのものであり、広くはこの世を二つの
勢力に分けて戦わせるためのものであるこの征服の最終目標は、人一人の手の中に納まるほど小さなビ
ンに入れられ塔を離れた。
永遠の命を欲した古代の王が血を流した後、時代は急激に変化するかのように見えた。
ジグハルトは死の女神シーレンの封印のうち、啓示の封印貪欲の封印戦乱の封印を解いた。地上の所々
に巨大な建築物が現れ、待ちくたびれたかのようにその間息を潜めていた二つの勢力は露骨な戦いを繰
り広げ始めた。
一見、ネクロポリスとカタコムは庶民の暮らしとはなんの関連もないように見えた。彼らは長い間得た
知恵で、支配者が変わったからといって彼らの暮らしが変わることはないということを知っていた。
多くの人々は、黄昏の司祭が彼らを煽ったと言う。ある者は、黄昏の司祭は時を待っていただけだとも
言う。どっちが真実かはわからないが、一度着いてしまった炎は徐々にその強さを増していった。
黎明の君主たちは黄昏の革命軍に対抗する力が必要だった。彼らはしばし自らの領地を忘れた。君主た
ちは彼らが今までずっと耐えてきた分、もう少しぐらい我慢してくれるだろうという誤った判断を下し
てしまったのだ。
歴史書に決して名前が挙がることはない普通の民たちは、実際に何がおきているのかすら判らないまま暮
らし、戦い、そして死んでいった。しかし新たな世の中が来ることを切に願って戦ったのもまた彼らだった。